廃業コスト
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飲食店閉店の完全ガイド

閉店の流れ・届出先・費用の内訳・従業員対応・原状回復まで、飲食店の閉店に必要な情報を網羅的に解説します。中小企業庁の統計データや実際の閉店事例をもとに、具体的な金額と手順をお伝えします。

この記事のポイント
  • 飲食店の閉店費用は平均200〜500万円。原状回復費が最大の出費(坪単価5〜15万円)
  • 閉店準備は最低3ヶ月前から開始。届出先は保健所・消防署・税務署・ハローワーク等7ヶ所以上
  • 居抜き売却なら原状回復費を節約+売却収入で数百万円の差が出ることも
  • 従業員への解雇予告は30日前までが法律上の義務(労働基準法第20条)

飲食店の廃業を取り巻く現状

中小企業庁「中小企業白書(2024年版)」によると、2023年に休廃業・解散した企業は約5万9,000件。そのうち飲食業は常に上位を占め、宿泊業・飲食サービス業の廃業率は年間5.6%と全業種平均(3.3%)を大きく上回っています。

一方で、廃業する飲食店の約4割は「閉店の準備不足」が原因で余計なコストを支払っているというデータもあります。正しい知識と計画的な準備が、閉店コストを大幅に抑える鍵です。

5.6%

飲食業の年間廃業率

(全業種平均3.3%)

200〜500万円

平均閉店費用

(20〜30坪の場合)

約4割

準備不足で余計なコスト発生

(業界調査より)

閉店のタイムライン

飲食店の閉店は、突然決めて翌日に店を閉じるわけにはいきません。従業員への通知義務、テナント契約の解約予告期間、各種届出の期限があるため、計画的に進める必要があります。以下のタイムラインに沿って準備しましょう。

3ヶ月前

閉店決定・従業員告知

  • 閉店の意思決定を行い、最終営業日を仮設定する
  • テナント契約の解約予告期間を確認(多くは3〜6ヶ月前通知が必要)
  • 税理士・行政書士への相談開始
  • リース契約の残債・違約金条件の確認
  • 従業員への告知(全体ミーティングで丁寧に説明)
専門家の視点:「解約予告期間は契約書に明記されていますが、見落としている経営者が非常に多い。特に飲食店は6ヶ月前通知が必要なケースもあり、通知が遅れると違約金が膨らみます」(中小企業経営コンサルタント)
2ヶ月前

居抜き/M&A検討・各種届出準備

  • 居抜き売却の可能性をオーナーに確認(承諾の取得)
  • 居抜き仲介会社に査定依頼(複数社に相見積もり推奨)
  • M&A(事業譲渡)の検討:常連客・立地・レシピに価値がある場合
  • 取引先・仕入先への通知と支払精算
  • 各種届出書類の準備開始
  • 予約の受付停止の検討
1ヶ月前

在庫処分・設備撤去業者手配

  • 食材の在庫を計画的に減らす(仕入れ量を段階的に縮小)
  • 中古厨房機器の買取業者に見積もり依頼
  • 原状回復工事の業者を選定(3社以上の相見積もり推奨)
  • 各種サービスの解約手続き(光熱費・通信費・POSレジ・グルメサイト等)
  • 常連客への案内(店頭掲示・SNS・DMなど)
閉店日

最終営業日

  • 最終営業日の売上金・レジ締め
  • 残食材の処分(廃棄または従業員への分配)
  • 店舗の最終清掃
閉店後

原状回復・届出完了

  • 原状回復工事の実施(通常2〜4週間)
  • 各行政機関への届出提出(保健所・消防署・税務署など)
  • 鍵の返却、保証金・敷金の精算
  • 従業員の離職票発行・社会保険の資格喪失届提出
  • 確定申告の準備(廃業年の経費を漏れなく計上)

ケーススタディ:東京都内30坪の居酒屋を閉店したAさんの場合

実際に飲食店を閉店した経営者の事例をもとに、どのような費用が発生し、どのように対処したかを紹介します(個人情報保護のため、詳細は一部変更しています)。

Aさん(50代男性)/ 東京都渋谷区

居酒屋30坪 / 従業員5名(正社員2名・パート3名)/ 開業12年

通常廃業した場合の費用内訳

費用項目金額
原状回復費用(30坪 × 約7万円/坪)200万円
解約違約金(家賃20万円 × 4ヶ月分)80万円
従業員退職金(正社員2名分)90万円
設備撤去・在庫処分45万円
看板撤去・その他25万円
合計440万円

もし居抜き売却していたら?

Aさんの店舗は駅徒歩3分の好立地で、設備も比較的新しい状態でした。居抜き仲介会社の試算では、造作譲渡価格は250万円が見込めました。

項目金額
原状回復費用0円(不要)
居抜き売却収入+250万円
仲介手数料(売却額の15%)-37.5万円
退職金・その他(変わらず)-160万円
実質負担約-28万円

通常廃業(440万円)と居抜き売却の場合(実質プラス)で、差額は約470万円にもなります。

Aさんの振り返り:「もっと早く居抜き売却を知っていれば...。閉店を決めてから動くのではなく、閉店を考え始めた段階で居抜きの査定だけでも取っておくべきでした。査定は無料なので、リスクは何もありません」

必要な届出一覧と具体的な手順

飲食店を閉店する際は、複数の行政機関への届出が必要です。届出を怠ると罰則が科される場合もあるため、漏れなく行いましょう。

届出先届出名期限費用
保健所飲食店営業許可の廃業届廃業後10日以内無料
消防署防火対象物使用中止届使用中止日まで無料
消防署防火管理者の届出(解任届)速やかに無料
労働基準監督署適用事業報告(廃止届)廃止後速やかに無料
税務署個人事業の廃業届出書廃業後1ヶ月以内無料
税務署給与支払事務所等の廃止届出書廃止後1ヶ月以内無料
都道府県税事務所事業廃止届出書各自治体に確認無料
ハローワーク雇用保険の適用事業所廃止届廃止翌日から10日以内無料

保健所届出の具体的な手順

1

営業廃止届を保健所に提出

管轄の保健所で「飲食店営業許可廃止届」の用紙を入手するか、自治体のWebサイトからダウンロード。記入例もサイトに掲載されています。

2

営業許可証の返納

廃止届と一緒に、交付されていた営業許可証(原本)を返納します。紛失した場合はその旨を申告してください。

3

消防署に防火対象物使用中止届を提出

保健所への届出と並行して、管轄の消防署にも届出を行います。防火管理者の選任解除届も同時に提出しましょう。

4

深夜営業届出の取り下げ(該当する場合)

深夜0時以降にお酒を提供していた店舗は、警察署に「深夜における酒類提供飲食店営業」の届出取り下げが必要です。

※ 法人の場合は上記に加え、法務局への解散登記・清算結了登記、官報での公告手続きが必要です。詳しくは法人清算の手順と費用をご覧ください。

費用の内訳と相場

飲食店の閉店費用は、店舗の規模や立地、内装の状態によって大きく異なります。以下は20〜30坪程度の一般的な飲食店を想定した相場です。日本政策金融公庫の調査では、飲食店の廃業時に「想定以上の費用がかかった」と回答した経営者は約6割に上ります。

原状回復費用:100〜450万円

飲食店は厨房設備の撤去、排気ダクトの除去、防水処理の復旧、グリストラップの撤去など、他業種よりも原状回復の費用が高くなる傾向があります。坪単価で5〜15万円が目安です。重飲食(ラーメン・焼肉など油煙が多い業態)は坪単価8〜15万円、軽飲食(カフェ・バーなど)は5〜8万円が相場です。

具体例:渋谷区の居酒屋30坪の場合、ダクト撤去30万円+厨房解体80万円+内装解体60万円+廃棄物処分30万円=約200万円。スケルトン返しを求められる場合はさらに30〜50%上乗せ。

設備撤去・リース解約:30〜100万円

業務用冷蔵庫・製氷機・食器洗浄機などのリース解約違約金、自社所有の設備の撤去・処分費用が含まれます。リース残債がある場合は一括精算が必要になることもあります。なお、中古厨房機器の買取業者を活用すれば、業務用冷蔵庫で3〜10万円、ガスコンロで1〜5万円程度の買取が見込めます。

解約違約金:賃料の3〜6ヶ月分

テナント契約の中途解約に伴う違約金です。家賃15万円の店舗で45〜90万円、家賃25万円で75〜150万円が目安。契約書の解約条項を事前に確認してください。解約予告期間内に申告すれば違約金が減額されるケースもあります。

在庫処分費用:15〜50万円

食材の廃棄費用、食器・調理器具の処分費用です。営業終了に向けて計画的に在庫を減らすことで、費用を最小限に抑えられます。酒類は業者による買取も可能(未開封品に限る)。

従業員関連費用:退職金+解雇予告手当

退職金の支給義務は就業規則の定めによりますが、勤続年数に応じた支給が一般的です。勤続3年で15〜30万円、勤続10年で50〜100万円程度が中小飲食店の相場。解雇予告手当(30日分の平均賃金)は法的義務です。

その他:15〜40万円

看板の撤去費用(5〜15万円)、各種届出の手数料、専門家(税理士5〜10万円、行政書士3〜5万円)への報酬が含まれます。グルメサイトやWebサイトの解約・閉鎖費用も忘れずに。

従業員への告知タイミングと対応

従業員への閉店の告知は、経営者にとって最も心理的な負担が大きい作業のひとつです。しかし、法的な義務と誠意のある対応の両面から、適切なタイミングと方法で行う必要があります。

法律上の義務(労働基準法第20条)

労働基準法では、解雇の30日前までに解雇予告を行うことが義務付けられています。予告なしに即日解雇する場合は、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。たとえば月給25万円の従業員なら約25万円の解雇予告手当が発生します。

実務的には、閉店の1〜2ヶ月前に全体ミーティングで告知するのが一般的です。告知が遅れると従業員の転職活動に支障が出るだけでなく、信頼関係の崩壊や退職の連鎖(告知前に噂が広まる)リスクもあります。

告知時に伝えるべき項目

  • 閉店の理由と最終営業日
  • 給与・退職金の支払い条件と時期
  • 有給休暇の消化方針(全消化を推奨)
  • 離職票の発行時期(失業給付の申請に必要)
  • 転職支援の情報(ハローワーク、人材紹介会社の紹介)
  • 健康保険・厚生年金の資格喪失日と任意継続の案内
実務のポイント:告知は必ず対面で行い、個別の質問に答える時間を設けましょう。パートやアルバイトにも同様に説明が必要です。「会社都合退職」として離職票を発行すれば、従業員は失業給付を待機期間なしで受給できます。

原状回復のポイント

飲食店の原状回復は、一般的なオフィスや物販店舗と比べて工事の範囲が広く、費用も高くなります。これは、厨房のグリストラップや排気ダクト、防水処理、ガス配管など、飲食店特有の設備が多いためです。

工事項目費用目安
厨房設備の撤去(レンジフード・ガスコンロ等)30〜80万円
排気ダクトの撤去20〜50万円
グリストラップの撤去・清掃10〜30万円
内装解体(壁・床・天井)30〜80万円
電気・水道・ガス配管の撤去15〜40万円
産業廃棄物処理20〜50万円

費用を抑えるための3つのポイント

1. 複数業者から相見積もりを取る

最低3社以上から見積もりを取りましょう。業者によって30〜50%の差が出ることも珍しくありません。

2. 工事範囲をオーナーと書面で合意する

「スケルトン渡し」なのか「現状有姿渡し」なのかで費用が数倍変わります。口頭ではなく必ず書面で合意を取ってください。

3. 居抜き売却の可能性を検討する

原状回復費用が不要になるだけでなく、売却収入も得られます。詳しくは居抜き売却ガイドをご覧ください。

居抜き売却という選択肢

飲食店の閉店において、最も経済的に有利な選択肢が居抜き売却です。内装や設備をそのままの状態で次の借主に引き渡すことで、原状回復費用を節約できるだけでなく、造作の売却収入も得られます。

飲食店の居抜き売却相場

坪単価5〜20万円

30坪なら150〜600万円

経済的メリット(節約+収入)

200〜900万円

原状回復不要分+売却収入

ただし、居抜き売却にはオーナーの承諾が必須です。また、買い手が見つかるまでの期間は賃料が発生し続けるため、タイミングの見極めも重要です。

居抜き売却の詳細については、居抜き売却のメリット・手順をご覧ください。事業自体に価値がある場合(常連客がいる、立地が良い、レシピやブランドに価値がある)は、M&A(事業譲渡)も検討しましょう。

飲食店閉店でよくある質問

Q. 閉店を決めたら最初にやるべきことは?

A. まずテナント契約書を確認し、解約予告期間と違約金条項を把握してください。次に税理士に相談し、税務面の段取りを決めます。それと並行して、居抜き売却の可能性を居抜き仲介会社に無料査定で確認するのがベストです。

Q. 閉店にどのくらいの期間がかかりますか?

A. 閉店決定から全ての手続き完了まで、通常3〜6ヶ月です。法人の場合は清算手続きにさらに2〜3ヶ月加算されます。居抜き売却の場合は買い手が見つかるまで2週間〜2ヶ月程度の売却期間も見込んでください。

Q. 敷金(保証金)は全額返ってきますか?

A. 一般的には、原状回復費用が敷金から差し引かれた残額が返還されます。飲食店は原状回復費用が高いため、敷金を超える費用が発生するケースも珍しくありません。居抜き売却なら原状回復が不要なため、敷金がほぼ全額返還される可能性が高まります。

Q. お金がなくて閉店費用が払えない場合は?

A. まず居抜き売却を検討してください。売却収入で閉店費用を賄える可能性があります。それでも不足する場合は、日本政策金融公庫の廃業支援資金制度や、各自治体の中小企業支援窓口に相談しましょう。弁護士への相談も選択肢です(法テラスなら無料相談可能)。

閉店後の税金について

飲食店の閉店後も、確定申告の義務は残ります。廃業年の経費(原状回復費用・違約金・退職金等)を漏れなく計上することで、所得税を適正に抑えることができます。法人の場合は清算確定申告まで完了させる必要があります。詳しくは廃業時の税金ガイドをご覧ください。

まずは閉店費用を把握しましょう

業種・規模・テナント情報を入力するだけで、閉店にかかる費用の概算が30秒で分かります。居抜き売却との比較も確認できます。

廃業・閉店の費用、30秒で分かる

業種・規模・テナント情報を入力するだけで、廃業にかかる費用の総額を即時算出。居抜き売却やM&Aとの比較も。

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