廃業コスト
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事業承継 vs 廃業の判断基準

廃業か事業承継か迷っている方へ。判断のポイント・M&Aの選択肢・後継者不在の場合の対処法・事業承継税制を、具体的な数字と事例を交えて解説します。

この記事のポイント
  • 廃業する企業の約6割は黒字経営。事業に価値があるのに廃業は大きな損失
  • M&Aなら年間利益の2〜5倍の売却対価が見込める
  • 事業承継税制で相続税・贈与税の納税猶予が受けられる可能性あり
  • 後継者不在でもM&Aプラットフォームで全国から買い手を探せる時代

廃業と事業承継、どちらを選ぶべきか

事業の終わり方には大きく分けて「廃業」と「事業承継」の2つがあります。廃業は事業を完全に終了させること、事業承継は他の人や会社に事業を引き継ぐことです。

中小企業庁「中小企業白書(2024年版)」によると、廃業する企業の約6割は黒字経営のまま廃業しています。その主な理由は「後継者不在(約3割)」「経営者の高齢化・体調不良(約3割)」です。つまり、事業自体に価値があるにもかかわらず、事業承継やM&Aという選択肢を知らない・検討しないまま廃業してしまうケースが非常に多いのです。

約6割

黒字のまま廃業

約6割

後継者が未定

4,000件+

年間M&A成約件数

判断フローチャート

以下の質問に順番に答えていくことで、あなたに適した選択肢が見えてきます。

Q1. 事業は黒字ですか?(または直近3年で黒字の年がありますか?)

はい

事業に価値があります。事業承継・M&Aの可能性を検討しましょう。年間利益500万円の事業なら、1,000〜2,500万円の売却対価が期待できます。

いいえ

Q2へ進んでください。赤字でも事業の将来性や資産価値がある場合は承継の可能性があります。

Q2. 立て直しの見込みはありますか?

はい

新しい経営者の下で再建できる可能性があります。M&Aで事業を譲渡することを検討しましょう。

いいえ

Q3へ進んでください。

Q3. 従業員の雇用を守りたいですか?

はい

事業承継やM&Aなら従業員の雇用を引き継いでもらえます。廃業すると全員が職を失います。

いいえ

Q4へ進んでください。

Q4. 事業に売却可能な資産はありますか?

(顧客リスト、ブランド、特許、立地の良い店舗、専門設備、Webサイトのアクセス、SNSフォロワーなど)

はい

M&Aで譲渡すれば対価を得られます。少なくともM&Aプラットフォームに登録して、買い手がいるか確認しましょう。

いいえ

廃業が現実的な選択肢です。居抜き売却で少しでもコストを抑えることを検討しましょう。

事業承継のメリット

売却対価を得られる

事業を第三者に譲渡すれば、廃業コストを支払うどころか、逆に対価を受け取れます。中小企業のM&Aでは、年間利益の2〜5倍程度が売却価格の目安です。

具体例:年間営業利益500万円・純資産1,000万円の飲食店 → 売却価格の目安は2,000〜3,500万円(営業利益500万円 × 2〜5倍 + 純資産調整)

従業員の雇用を守れる

M&Aの契約で従業員の雇用継続を条件に含めることができます。長年一緒に働いてきた従業員の生活を守れるのは、経営者としての大きな安心材料です。中小企業M&Aの約8割で従業員の雇用が維持されているというデータもあります。

取引先・顧客に迷惑をかけない

事業を継続してもらえるため、取引先との契約や顧客へのサービスが途切れません。特に、BtoBの事業や継続的なサービスを提供している場合は重要です。

経営者自身の第二の人生

売却対価を元手に新たな事業を始めたり、引退後の生活資金に充てたりできます。廃業では費用がかかるだけですが、事業承継なら経済的なリターンが得られます。

事業承継税制の概要

親族や従業員に事業を承継する場合、相続税や贈与税が大きな負担になることがあります。これを軽減するのが「事業承継税制(特例措置)」です。

事業承継税制(特例措置)のポイント

  • 相続税・贈与税の100%納税猶予:後継者が取得した非上場株式等に係る相続税・贈与税の全額が猶予される(2027年12月末まで適用申請可能)
  • 対象株式の上限なし:特例措置では全株式が対象(一般措置では発行済株式の2/3まで)
  • 雇用維持要件の実質撤廃:特例措置では雇用の8割維持が未達でも、理由書を提出すれば猶予が継続
具体例:株式評価額5,000万円の会社を後継者(子)に贈与する場合、通常なら贈与税が約2,050万円かかりますが、事業承継税制を適用すれば全額が猶予されます。後継者が一定期間事業を継続すれば、最終的に猶予税額は免除されます。

注意

特例措置の適用には「特例承継計画」を2026年3月末までに都道府県知事に提出する必要があります。実際の贈与・相続は2027年12月末までに行う必要があります。期限が迫っているため、検討中の方は早めに税理士に相談してください。

廃業を選ぶべきケース

事業承継が常に最善とは限りません。以下のような場合は、廃業が現実的な選択肢です。

債務超過が深刻な場合

負債が資産を大きく上回っている場合、M&Aでの売却は困難です。法的な整理(特別清算・破産)を含めた廃業を検討する必要があります。

事業の将来性が見込めない場合

市場の縮小や規制強化などで、誰が経営しても利益を出すのが難しい業種・業態の場合は、買い手がつかないことが多いです。

急を要する場合

M&Aには通常3〜12ヶ月の期間が必要です。健康上の理由などで早急に事業を畳む必要がある場合は、廃業のほうが迅速に対応できます。

個人の技術・能力に依存している場合

経営者個人の技術やネットワークが事業の核であり、引き継ぎが困難な場合は、承継しても事業価値が維持できない可能性があります。

M&Aプラットフォーム比較

後継者がいない場合でも、M&Aマッチングプラットフォームを活用すれば全国から買い手を見つけることができます。近年は小規模事業者向けのサービスが充実しており、年商数百万円規模でも利用可能です。

プラットフォーム登録費用手数料特徴
プラットフォームA無料成約価額の2%
(最低25万円)
成約件数国内トップクラス。専門アドバイザーの伴走あり。小規模案件に強い
プラットフォームB無料成約価額の3%
(最低30万円)
IT・Web系に強い。売り手手数料無料の案件あり
プラットフォームC無料成約価額の5%
(最低50万円)
大手M&A仲介会社運営。中堅〜大企業の買い手が多い

※ 手数料率や最低手数料は変動する場合があります。最新情報は各プラットフォームの公式サイトでご確認ください。

事例:後継者不在でもM&Aで事業継続できたCさんの場合

Cさん(60代男性)/ 埼玉県さいたま市

町の電気工事店 / 従業員8名 / 創業35年 / 年商8,000万円・営業利益600万円

Cさんは体力の衰えを感じ引退を決意しましたが、息子は別の仕事をしており承継の意思なし。長年の付き合いのある取引先と8名の従業員の雇用を心配していました。

事業承継・引継ぎ支援センターに相談したところ、M&Aプラットフォームを紹介され登録。3ヶ月後に同業の電気工事会社(隣県)から買収の申し出がありました。

M&Aの結果

売却価額2,800万円
M&A仲介手数料-120万円
税理士・弁護士費用-60万円
手取り額約2,620万円

もし廃業していたら?

原状回復費用、設備撤去費、退職金、法人清算費用を合計すると約400万円のマイナス。M&Aの手取り額と合わせると、約3,000万円の差が出ていました。

Cさんの振り返り:「M&Aなんて大企業の話だと思っていました。でも、小さな町の電気工事店でも買い手が見つかった。8人の従業員が今も同じ職場で働いているのが何より嬉しい。引退後は売却資金で妻と旅行三昧です」

後継者不在の場合の対処法

中小企業の約6割は後継者が決まっていないとされています。後継者が見つからないからといって、すぐに廃業を選択する必要はありません。

1. 従業員への承継(MBO)

信頼できる従業員や幹部に経営を引き継ぐ方法です。事業内容を熟知しているため、引き継ぎがスムーズです。ただし、従業員に買取資金がない場合は、分割払いやファイナンスの活用を検討する必要があります。日本政策金融公庫には「事業承継・集約・活性化支援資金」という融資制度もあります。

2. M&Aマッチングサービスの活用

オンラインのM&Aマッチングプラットフォームを活用すれば、全国から買い手候補を見つけることができます。登録は無料のプラットフォームが多く、小規模事業でも利用可能です。匿名で登録できるため、現在の取引先に知られる心配もありません。

3. 事業承継・引継ぎ支援センターへの相談

各都道府県に設置された公的機関で、無料で事業承継の相談ができます。M&Aの仲介や後継者とのマッチング支援も行っています。2023年度は全国で約1.2万件の相談に対応し、約1,600件のM&A成約を支援しています。まずは最寄りのセンターに相談してみることをお勧めします。

M&A(第三者承継)の主な手法

株式譲渡

会社の株式をそのまま買い手に売却する方法。最もシンプルで、法人格がそのまま残ります。許認可や契約関係がそのまま引き継がれるため、手続きが比較的簡単。中小企業のM&Aで最も多い手法です。

事業譲渡

事業の一部または全部を買い手に譲渡する方法。法人は残りますが、事業だけを切り離して売却できます。個人事業主でも利用可能。不要な資産や簿外債務を除外できるメリットがあります。

会社分割

事業を別会社に承継させる方法。複数事業を営んでいる場合に、一部だけを分離して売却する際に使います。税務上のメリットがあるケースもありますが、手続きが複雑です。

M&Aの売却価格の目安は、小規模事業者の場合「年間営業利益の2〜5倍 + 時価純資産」が一般的です。業種の成長性、顧客基盤の安定性、立地の優位性などによって大きく変動します。

まずは廃業コストを把握しましょう

事業承継・M&Aを検討する場合でも、まずは廃業した場合のコストを把握しておくことが重要です。「廃業するとこれだけコストがかかる。だから、最低でもこの金額以上で売却したい」という交渉の材料にもなります。

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