- 廃業による解雇は「会社都合退職」。従業員は失業給付を待機期間なしで受給可能
- 解雇予告は最低30日前まで。予告しない場合は解雇予告手当(平均賃金30日分)が必要
- 社会保険の資格喪失届は退職日の翌日から5日以内に年金事務所へ
- 従業員への告知は対面で丁寧に。転職支援の情報提供が信頼維持につながる
解雇予告の法的義務
廃業に伴う従業員の解雇は、労働基準法第20条に基づく解雇予告が必要です。少なくとも30日前までに解雇の予告をしなければなりません。予告期間が30日に満たない場合は、不足日数分の平均賃金を「解雇予告手当」として支払う必要があります。例えば、予告なしに即日解雇する場合は30日分、15日前に予告した場合は15日分の解雇予告手当を支払います。なお、廃業による解雇は整理解雇の一種ですが、事業そのものが消滅するため、通常の整理解雇で求められる4要件(人員削減の必要性・解雇回避努力・対象者選定の合理性・手続きの妥当性)は比較的緩やかに判断されます。
- 解雇予告: 30日前までに書面で通知
- 解雇予告手当: 予告が30日未満の場合、不足日数分の平均賃金を支給
- 平均賃金の計算: 過去3ヶ月の賃金総額 ÷ 暦日数
- 試用期間中(14日以内)の従業員は予告不要
退職金の計算と支払い
退職金の支給は法律上の義務ではなく、就業規則や退職金規程に基づきます。規程がある場合は規程通りに計算・支給する必要があります。規程がない場合でも、慣行として退職金を支給していた実態があれば、支給義務が認められることがあります。中小企業の退職金の相場は、勤続3年で15〜30万円、勤続5年で30〜60万円、勤続10年で80〜150万円程度です。なお、中小企業退職金共済(中退共)に加入している場合は、中退共から直接従業員に退職金が支払われます。
- 退職金の支給義務は就業規則・退職金規程による
- 中退共加入なら中退共から直接支給される
- 会社都合退職の場合、自己都合退職より高い支給率が適用されるのが一般的
- 退職金にかかる税金は「退職所得控除」が適用され、通常の所得より税負担が軽い
社会保険・雇用保険の手続き
従業員が退職する際は、社会保険(健康保険・厚生年金)の資格喪失届を退職日の翌日から5日以内に年金事務所に提出します。雇用保険の被保険者資格喪失届は、退職日の翌日から10日以内にハローワークに提出します。同時に離職証明書を提出し、離職票を発行してもらいます。従業員が失業給付を受けるために必要な書類なので、速やかに手続きしてください。
- 社会保険の資格喪失届: 退職日の翌日から5日以内(年金事務所)
- 雇用保険の被保険者資格喪失届: 退職日の翌日から10日以内(ハローワーク)
- 離職票の発行: 資格喪失届と同時に離職証明書を提出
- 退職後の健康保険: 任意継続(2年間)または国民健康保険への切り替えを案内
- 事業廃止の場合: 雇用保険の適用事業所廃止届も提出
従業員への告知のポイント
従業員への廃業の告知は、経営者にとって最も心理的負担が大きい作業です。しかし、誠実で丁寧な対応が、最終的にはトラブル防止と円満な関係維持につながります。告知は必ず対面で行い、全体ミーティングの後に個別面談の時間を設けるのが理想です。告知内容は、廃業の理由、最終営業日、給与・退職金の支払い条件、有給休暇の消化方針、離職票の発行時期、転職支援の情報を含めましょう。
- 告知は対面で行う(メールや掲示だけは不可)
- 全体ミーティング + 個別面談の二段階が理想
- 「会社都合退職」として離職票を発行(失業給付の待機期間なし)
- 転職支援情報(ハローワーク・人材紹介会社)を提供
- 有給休暇の消化を認める(法的に拒否はできない)
よくある質問
Q. パート・アルバイトにも解雇予告は必要ですか?
A. はい、パート・アルバイトであっても解雇予告(30日前)は必要です。ただし、雇用開始から14日以内の試用期間中の従業員は予告不要です。また、2ヶ月以内の有期雇用契約で、契約期間が満了する場合は、解雇ではなく「雇い止め」となります。
Q. 退職金規程がない場合、退職金は払わなくていいですか?
A. 法律上は支給義務はありませんが、過去に退職金を支給した実績がある場合は「慣行」として支給義務が生じる可能性があります。トラブルを避けるため、支給する場合は書面で金額と支給日を明示し、支給しない場合もその旨を丁寧に説明してください。
Q. 従業員が有給休暇を全て消化したいと言っています。拒否できますか?
A. 原則として拒否できません。年次有給休暇は労働者の権利であり、退職が決まっている場合は時季変更権(他の日に振り替える権利)も行使できません。廃業までのスケジュールと有給残日数を確認し、業務引継ぎと両立するよう計画を立ててください。
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